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null「そうだったのか」  悠さんは、今下町が感じたとおりの姿勢で、チビリとひと口焼酎を呑んだ。 「何とかしてよ、頼むから」  悠さんは下町の顔を見ずに、カウンターのしみをみつめてつぶやいた。 「そうだなあ」  下町は途方に暮れたように天井《てんじよう》を見た。 「いろいろな考え方があるぜ」  悠さんはうつむいたまま、コクリと頷く。 「二人を元の鞘《さや》へおさめられればそれに越したことはないね」 「うん」 「でも、それが一番むずかしそうだ」 「どうして」 「男は別な世界を知ったんだ。総会屋だか何だか、そいつは調べるのは簡単だけど、とにかくアブク銭の味を知っちまってるから、よほどの手痛い目にあわなければ、とても元の場所へ引っ返してイチからやり直せるもんじゃない」 「そうだろうね」 「また、清子さんだけのことを考えるなら、案外スッパリ別れちゃったほうがしあわせになれるかも知れない」  悠さんは頷《うなず》かない。 「三十四とか言ったね。再婚のチャンスもある」  悠さんは突然カウンターにおでこを打ちつけるようにして、両手で頭をかかえた。